読んだ本を紹介する記事をあまり書けていない。短くてもいいからもっと書きたい。この記事は、それへの第一歩と考えている。
三宅香帆さんの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』を読んだ。最近けっこう話題になっていた本だと思う。いまの僕は、「本を読むこと」自体が仕事の一部になっているから日々の読書ができているけど、「働いていると本が読めなくなる」感覚は分かるし、そういう経験も過去にはあった。
この本では、主に明治時代から現代に至るまでの「読書史」を取り扱っている。また、この「読書史」は、少し奇妙に表現するなら「努力史」「がんばり史」とも言える。
「読書」という概念に「勉強」と似たところがあるのは分かってもらえると思う。そして「勉強」は、「刻苦勉励」という熟語においての用法などからも読み取れるように「がんばり」のニュアンスがある。やや昔風の表現だが、売買のシチュエーションで客が「もうちょっと勉強して!」と売り手に言う場合、それは「もうちょっと頑張って(値引きして)!」という意味合いである。このような意味で、読書史は努力史・がんばり史でもある。
人々が何を志したか。どこに向かって努力したか。どんな風に見栄を張ろうとしたか。そうした「理想像」の変遷、「あるべき姿と自分とのせめぎ合い」が読書史には刻まれている。明治時代から順を追って読書史を辿っていくことで、いまの自分たちを取り巻く現代はどういう時代なのか、どういう力学が働いているのかが見えてくる。
働きながら、働くこと以外の文脈を取り入れる余裕がある。それこそが健全な社会だと私は思う。働いていても、働く以外の文脈というノイズが、聴こえる社会。それこそが、「働いていても本が読める」社会なのである。
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三宅香帆(2024)『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』 集英社 P.185
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』
三宅香帆 著
1100円 新書判 288頁 978-4-08-721312-6
集英社 2024年4月30日 発行
https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-721312-6
この記事内の『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』の引用箇所は、Kindle版でのページ数を示しています。