『海藻の疑問50』

今回この本を取り上げたのは、「このタイトルを日記一覧ページに並べたい」という動機によるところも大きいのだが、こういう本になんとなく食いついてみてこその自分であるという思いの影響もまた大きい。

小学生のときは特に、図書館や図書室にある本をなんでもかんでも(小中学生向けのものに限るが)手に取って、なんでもかんでも「面白い!」と思いながら読んでいた。宇宙、ことわざ、木工、有毒生物。知識を深めるのよりは広げるのが好きで、よく知らない分野の本こそ楽しく読んだ。新鮮な驚きに満ちていた。

当時ほどの吸収力は今では無いし、かつて知ったことを忘れてしまったりもしている。昔に戻りたいというわけでもない。でも、よく知らない分野の本になんとなく飛びついてみるのは、今でも大事な行動のひとつだと思っている。自分自身に起こるミューテーションの可能性を担保してあげるような心持ちだ。

きれいな花とか造形さまざまな魚などに比べれば、海藻は、わりと地味というか、子供の関心を集めにくい対象だと思う。僕が通っていた図書館や図書室の子供向けコーナーでは、海藻にスポットを当てた本を見た記憶があまり無い。

出版されていないということはないんだろうけど、図書館や図書室が仕入れていなければ、利用者からの仕入れ希望も少なく、結果として海藻を特集した本が置かれていないままになったりしているような気がする。

そのためか、むかし調べたのを忘れたというより、単に知らないことが多くて面白かった。たとえば「日本で最初の海藻学者はだれ?」という問い。答えは岡村金太郎(1867~1935)である。

僕はそのことも知らなかったのだが、岡村金太郎にまつわる逸話として次のようなものが紹介されており、僕のなかで彼が印象的な人物として記憶された。

question 41 日本で最初の海藻学者はだれ?

答えは岡村金太郎です。
岡村は明治から昭和初期にかけて活躍した海藻学者で、「日本海藻学の開祖」と呼ばれています。海藻学も植物学の一部ですから、それ以前にも海藻を採集したり、押し葉をつくったりした植物学者はいましたが、海藻を専門に研究した日本人は岡村が最初でした。
(中略)
ところで、岡村と同じ時代に活躍した有名な植物学者に牧野富太郎がいます。
(中略)
鎌倉あたりを採集していた牧野ら著名な植物学者の一団が、海岸でひろった漂着物を日本に未知の海藻と思って小包にして岡村に郵送したところ、それがただのフットボールの中ゴムだったので、岡村が「フットボウリア マキノイ」と命名して回答したことがあったといいます。
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日本藻類学会 編(2016)『海藻の疑問50』 成山堂書店 P.130-132

牧野富太郎のことは『植物知識』とかで知っている部分があるし、高名な植物学者で、この分野における権威だと分かっている。そんな牧野と交わしたユーモラスなやり取りを見て、岡村金太郎にも、海藻学にも、なにか一気に親しみが湧いてくる。

海藻たちの生存戦略や、ほかの生物との関わり合いも興味深かった。たとえば「流れ藻」についての次の記述は、うまく言い表せないけど、僕にとって大事なモチーフ・参考にしたいモデルケースだという風に思えた。「先達はあらまほしき事なり」と言うが、人間に限定せずに見渡せば、本当にさまざまな先達が存在している。

沿岸の藻場が魚介類の棲みかとなっているように、海面を浮遊している流れ藻を生活史の特定の時期に利用する生きものがたくさんおり、ひとつの生物社会を形成しています。サンマやトビウオといった魚の産卵場所となり、ブリの稚魚であるモジャコやマアジの稚魚は流れ藻に随伴し一時期を過ごしています。岸に近い流れ藻ではメバルやカワハギなどの隠れ家や餌場にもなっています。特にブリやハマチの養殖に用いる種苗は南日本沿岸域の流れ藻に付いているモジャコを用いており、海洋生態的な面だけではなく、日本の水産資源にとっても流れ藻は重要な役割を果たしています。
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日本藻類学会 編(2016)『海藻の疑問50』 成山堂書店 P.37

みんなが知りたいシリーズ(1) 『海藻の疑問50』
日本藻類学会 編
1600円 四六判 176頁 978-4-425-83061-9
成山堂書店 2016年6月28日 発行

https://www.seizando.co.jp/book/4443/

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